2009年8月2日日曜日

「読む」事で脳は体験している

Brain's Moving Experience When Reading: Scientific American Podcast

DickとJaneの事を覚えていますか?そして二人の犬のSpotの事は?恐らく彼らの事は1年生の時に読んで知っているのではないでしょうか。「ほら、Spot走って!走って、走って!Spot!」です。Psychological Science誌に寄稿された論文にて、あなたはSpotが走っている光景を見るだけでなく、あなた自身が走っている事が示唆されています。少なくともあなたの脳の中で・・・ですが。これは、ある行為を制御する部分とその行為の記述を読んだ時に反応する脳の部位が同じであるためです。

科学者達は長年の間、私たちの脳は読む事によって読んだ内容をシミュレートしていると考えてきました。行動科学の領域では、サッカーのゴールを決めた内容を読み、その動きをまねするように文面で指示した場合の方が、口頭や、頭を叩く等の手段で指示する場合より、より速く脳が反応することが分かっています。近年では実時間領域での脳画像解析技術を用いて、ある文章を読んだときに脳の中で何が起こるのかを調べられています。その文章にはRaymondという7歳の男の子の日常が28のテーマにまとめられています。例えば、「ベッドから起き上がる」、「英語の授業中席に座っている」などです。案の定、Raymondが学校に向かって急いでいるのを読んだ時には読者の脳細胞で「急ぐ行為」を司る部分がより反応することが分かりました。

幸運なことに、ものまねをするのは脳の内部に限られるようです。私たちは読んだ内容のとおりに動いたりはしません。もし動いてしまうならば、新聞を読んでいる人の隣りに座ろうなんて絶対に思わなくなってしまうでしょね。

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「読む」事によって反応する箇所と、自分がその行為を行う事によって反応する箇所が共通しているという研究結果が出た・・・ということでした。そして、その体験談が自分のものでなくてもそうなるというところがミソでしょうか。

登場人物の体験をあたかも自分の体験のように感じられることが読書の醍醐味の一つであることを考えると、この結果には感覚的に納得できるという意味で頷けるものがあります。それと同時に文字の列である「物語」を脳内で体験として想起できるという、脳の高機能さにビックリしてしまいます。この記事では、特に読んだ場合の方がより体験として再起されやすいとの事でしたが、例えば映画を見たり、実際に人がそれをしているのを見た場合ではどうなんでしょうかね。この記事だと、おそらく弱くしか反応してないと言うことになるのでしょうか。

文字を理解するのに脳の中で「視角化」をする必要がある。そのために自分自身の体験を想起し追体験する必要がある。よって脳の行動を司る部位が反応するといったところでしょうか。

読書の際に感じる、映画を見る時とは違うあのリアルさは、読む事で自分の体として追体験(脳の中ですが)しなくてはならないからなのかもしれません。

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  • Dick, Jane and Spot :
  • For years : 何年にもわたって、長年の間
  • suspect : 疑う
  • behavioral study : 行動科学
  • score a goal : (サッカー、アメフトなどで)ゴールを決める
  • scurry : 急ぐ、疾走する、急いでする、急いで行く
  • govern : 支配する、統率する
  • spring to life : 急に活気づく
  • confined to… : ・・・に限定される
  • act out : 演じる

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